ヤッケを着込み稜線の岩に腰掛けて夕暮れを待つと、
西方の山並みはアーベントロートの光に包まれていきました。
遠く北アルプスの長大な峰々も雲海に浮かぶ島のように見えます。
刻一刻と変化する山上のドラマは静かな感動と深い余韻を与えてくれました。
私が感銘を受けた写真集のひとつに、ウィーン生まれの写真家エルンスト・ハース(1921~1986)
の「The Creation」があります。
もし宇宙に創造主のようなものがいたとしたら、エルンスト・ハースと彼の機材を使って描かせたような
「The Elements」 「The Seasons」 「The Creatures」の3部からなる100枚ほどの写真集からは、
地球の誕生から今に続くその営みが感動的に迫ってきます。
山に登ると、私はとても満ち足りた気分になります。
それは決して山頂を極めた達成感ではなくて、ただそこにいる喜びです。
たしかに私は大自然の中ではちっぽけで取るに足らない存在で日々くだらない事で思い悩んでもいますが、
ここにいると、その大自然の根底に流れている太古からの「Elements」が
私の中にも流れている事を実感できるのです。
山を下りると、雑木林のコナラや蝶にも、我が家のクリスマスローズや三毛猫にも、
その「Elements」が宿っているように感じてます。