(5月下旬・丹沢山魂)
霧の朝、主脈から外れてヤシオツツジの美しい檜洞丸へと足を向けると、
休日以外はあまり人の歩かないこの道は霧の中で静まりかえっていました。
木々の先は深い谷。
足もとの登山道と見覚えのある岩や木を頼りに足を進めていきます。
霧の中を何時間も歩いていると、何か自分も木や草や岩と同じ森の一部になったような感覚になってしまいます。
世の中のややこしい事はみんな忘れて、この霧の中でずっと彷徨っているのもいいかもしれない。
そんな事を思っていると、藪の中からガサガサという音とともに一匹の野生の鹿が現れました。
結局この時に会ったのは彼女(たぶん)だけで、
檜洞丸に着いた頃には霧も引き、その日の夕刻には雑踏の街に帰って行きました。