
山腹を黄金色に輝かせる落葉松は秋の山には欠かせない存在です。
まだ若く体力と時間を持ち合わせていた頃、秋の北アルプス縦走の下山地に上高地を選びました。
富山県の折立から入山し、太郎平、北ノ俣岳、そして黒部五郎岳の美しい秋色のカールで遊び、
三俣蓮華岳から尖った穂先を仰ぎながら西鎌尾根を経て槍ケ岳に登りました。
槍沢を下り横尾、徳沢から明神、カッパ橋まで下ると晩秋の上高地は高い青空の下にありました。
霞沢岳の黒い山腹を背景に輝く落葉松林の黄葉を見ながらバスターミナルへと歩くと、
突然、風も吹かないのに落葉松の葉が音もなく黄金色の雨のようにキラキラと舞ながら降ってきました。
私は人気のない上高地で呆然と立ち尽くし、バスの発車時刻をすっかり忘れてしまいました。